奈那ちゃんはこれまで様々な地域活動や自分の想いを人前で発表する場に参加してきた。そんな積極性は企画を自ら発案するという経験からもたらされた。
<行動を起こすきっかけ>
中学校から続けている陸上を続けたい、大学に進学したいという漠然とした思いから釜石高校に進学したという奈那ちゃん。
しかし、高校で待ち受けていたのは理想とは違い、勉強と部活動に追われる毎日だった。
高校生になり、「釜石コンパス」を始めとしたキャリア教育プログラムを通して、普段は話を聞くことのない社会人から話を聞き、もっとたくさんの人と交流したいという気持ちが芽生え、釜石の地域の人や大学生と交流するイベントに参加するようになった。
そうするうちに奈那ちゃんはあることに気づいた。
「わたしは釜石を知らない」
釜石で生まれ育って17年間過ごしてきたのに、釜石の大人たちが行っている取り組みについて自分は何も知らなかった。釜石のことを知らないまま自分は外に出て行ってしまってよいのだろうかと思った。
それと同時に、話を聞くうちに釜石の大人たちに憧れを抱いた。
私も釜石のために何かがしたい!
その想いからボランティア活動に積極的に参加するようになった。
その中で奈那ちゃんにとって転機となった出来事がある。それはサービスラーニングへの参加だった。サービスラーニングとは、釜石で何かをしたいという想いを持つ高校生が大学生や地域の大人にサポートしてもらいながらアクションプランをつくり、企画を実行していくという取り組みである。高校2年生の夏にサービスラーニングの合宿に参加し、釜石でやりたいことを挙げていった。
奈那ちゃんには「高校生誰もが思いつかないことをしたい」という想いがあった。今まで国際交流や防災についての取り組みは行われていたので、あまり取り組みのないキャリア教育という側面に目をつけた。
また、釜石には高校が2つしかなく、高校卒業後大学に進学するか就職するかという理由だけで高校を選択してしまう人が多いということ、卒業後は釜石を離れてしまう人が多いということを感じていた。さらに、釜石には大学がなく、働く場も少ないため多くの若者が釜石を出て行ってしまう。
実際に自分自身も漠然とした理由で高校を選んでおり、中学校の頃からキャリア教育があったらもっと視野が広がっていたのではないかと思った。中学生のキャリア教育には職場体験があるが、どんな仕事があるのかを学ぶ機会にすぎない。中学生の頃から大人の生き方や働く意義に触れられる機会が欲しい。そんな想いを胸に「夢探しプロジェクト」を考案した。
<プロジェクトを企画してみて>
大学生や地域の大人、教育委員会との話し合いを重ね、去年の12月に「夢探しプロジェクト~かだっぺし~」を開催した。
中学生の集客に苦戦したが、実際に開催してみてもっとたくさんの中学生にこのプロジェクトを広めていきたいと思った。
プロジェクトを自分で企画するという経験を通して、想いを持って行動することで多くの仲間と出会うことができると学んだ。自分の企画を知ってもらい参加してもらえる喜びを知った。
今は自分の取り組みについて人前で発表する機会にも積極的に参加しており、奈那ちゃんの感情のこもった発表はたくさんの人の心を動かしている。人前で話すことは緊張するが、自分の想いを言語化することの難しさと楽しさを学んだ。こうして言葉にして伝えることで、もっと多くの人に活動に興味を持ってもらえれば嬉しいと話してくれた。
<奈那ちゃんにとってのふるさととは>
“出発点”
自分がプロジェクトを起こすという経験を初めてできた場所。
今の自分があるのは釜石にいたからこそ。
そんな特別な場所が奈那ちゃんにとってのふるさと。